光太郎の母は東京出身の良家のお嬢様を光太郎の配偶者にと考え、頻繁に見合い写真を見せていた。
だが光太郎が連れてきたのは田舎出身の智恵子。母はガックリしたという。
光太郎は母への愛情と智恵子への愛情との間で悩む。
光太郎の父は表立っては反対しなかったが親戚の者を使って智恵子の素性を調べさせた。すると複雑な家庭事情や血統について、いろいろ好ましくない点が見つかった。
光太郎の両親は困ってしまったが、結局本人の強い願いに押されて結婚を認める。大正3年12月20日のことだった。ごく身内にだけ二人の結婚は知らせられた。
「ご結婚の知らせは直接には青鞜社へも、わたくしへも、また社員のだれにも来ませんでした。そしてそれ以来、智恵子さんはわたくしたちから完全に消えてしまいました」(平塚らいてう)